ナショナル RF-541の調整例 FM編

 FMラジオの中間周波数は10.7MHzとなっている.
-FMの中間周波数-
 その局部発振(局発)周波数は中波/短波と逆に受信周波数より10.7MHz低い周波数で発振する.首都圏のTokyo FMの送信周波数は80MHzなので,これを受信する場合の局発周波数は80-10.7=69.3MHzとなる.局発周波数と受信周波数の差10.7MHzが中間周波数(IF周波数)として,発振混合段から出力される.
-FMラジオの検波-
 AMは信号強度の変化が音声となるが,FMは周波数弁別回路で周波数の偏移を音声として抽出する.FM放送の最大周波数偏移幅は中心周波数から±75kHzとなり,偏移幅が大きいほど大きな音声振幅となる.1970年代までの多くはレシオ検波が多く用いられ,これはFMのS字特性の調整が必要な方式.離調すると音声に歪みが発生し聞きづらい音質となる.

FMラジオのディスクリミネータ
ディスクリミネータ(緑色コア)
FMラジオのディスクリミネータ
ディスクリミネータ(橙色コア)


 周波数偏移を音声に変換するにはディスクリミネータ(discriminator)と呼ばれる2つのコイルが用いられる.これで中心周波数の10.7MHzに対して周波数偏移を音声信号に抽出する.


-FMラジオのIF調整-
 調整にはFM信号を出力できる標準信号発生器(SSG)と音声波形をモニタをするオシロスコープか歪率計が必要となる.調整機材が用意できないのなら触れないようにする.
① 10.7MHzの信号
 SSGで10.7MHz 400Hz(最大周波数偏移幅の30%の22.5kHz)で周波数変調をした信号を用意する.スピーカ端子にオシロスコープか歪率計を接続する.10.7MHzの信号をテストループでラジオに入力する(IF信号をロッド・アンテナで受信してもよい、ロッドアンテナに直接SSG出力を繋がないこと).同調ダイヤルを回してどの位置でも受信することを確認.
② IFTを最大感度に調整する
 FM用のIFTはAMとは違い,コアの色は標準化されていないと思われる.IF信号が最も大きくなるように「桃色」の各IFTのコアを調整する(本機では2個).

FMラジオのIFT
初段のFM用IFT
FMラジオのIFT
次段のFM用IFT


③ ディスクリミネータとIFTの調整
 オシロスコープで400Hzの正弦波となるか,歪率計で最も歪みが少ない位置にディスクリミネータを調整する.ここでの調整は音声出力を落とさずに正弦波に近づけることがコツ.波形や歪み率をモニタしながらディスクリミネータだけでなくIFTも少し調整して正弦波に近づけていく.これは最大変位幅の75kHzでも行うときれいな復調ができる.

FMラジオのディスクリミネータ調整前
調整前
FMラジオのディスクリミネータ調整後
調整後


トラッキング調整-
 ダイヤル表示を実際の周波数に合わせて,受信可能周波数の感度を均等に高い感度にする作業で手順はAMと同じ.事前にIFT調整がされている必要がある.

① 受信周波数
 最も低い受信周波数(76MHz)に選局ダイヤルをダイヤルを合わせる.76MHzの信号が受信できるように,発振コイルを調整する.
 最も高い受信周波数(90MHz)に選局ダイヤルをダイヤルを合わせ90MHzの信号が受信できるように,バリコンのOSC側のトリマを調整する.これらの最低受信周波数と最高受信周波数を数度繰り返す.
 ダイヤルと受信周波数が合わなくても良ければ,95MHzの信号を受信できるようにバリコンのOSC側のトリマを調整すればFM補完放送が受信できる機種もある.

FMラジオの発振コイル
FMの発振コイル
FMラジオのOSCトリマ
FM用バリコンのOSCトリマ


② 感度調整
 試験信号をロッドアンテナを伸ばした状態で受信し76MHzで最大感度となるようにアンテナ・コイル(不明なら触れないこと)を調整し,最高受信周波数で最大感度となるようにバリコンのANT側のトリマを調整を行う(付属のロッドアンテナに合った調整が必要で,SSGを直接接続するとこの調整が狂う).
 簡易的には78MHz付近(放送がされていない周波数)で最も聞こえる位置にバリコンのANT側のトリマを調整し,88MHz付近(放送がされていない周波数)で最も聞こえる位置にバリコンのANT側のトリマを調整し,これらの調整を数度繰り返す.

FMラジオのANTトリマ
FM用バリコンのANTトリマ

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