高周波増幅(同調付き)搭載 中波専用 8石スーパー
1962年の製品と思われる.中波専用535~1605kHzの高感度・高級ポケットラジオ.3連ポリ・バリコンを使ってアンテナ入力/高周波増幅出力/局発周波数を同期しながら同調を行い,本機もフロントパネルに「SUPER SENSITIVE」と誇らしげに記載されている.これは同時期のSONY製の高周波増幅(同調付き)の機種に記載されている.本機も当時の通信用受信機に搭載された機能で高性能の証で「高1中2」と呼ばれた構成.
ポケットラジオながら3つの表示部を持ち,右は上部から押下する独立の電源スイッチのON/OFFが表示され,中央にチューニングメータが配置され最良点に同調することが容易.左が周波数表示で選局ダイヤルは糸掛け式の減速機構付きで容易.周波数表示が小さいので少し見にくいがとても精巧なもの.さらにHIGH/LOWの音質切り替えと外部アンテナ端子を装備している.
-小さくとも同調回路付き高周波増幅-
3連ポリ・バリコンを内蔵して,アンテナ入力段と高周波増幅出力段それぞれで不要な信号を除去している.これはS/Nを高めるノイズが多い環境だとその効果がよく分かる.現代でも高性能な中波ポケットラジオとしてその存在感は衰えない.
-TR-817の性能-
一般的なラジオならSSGなどで1540kHzの信号を発生して,630kHzを受信すると1540kHzも受信される.本機はその妨害を感じることはない.ポケットサイズでも感度は高くさすがは高周波増幅(同調付き)と感じる.中波専用ラジオではここまでの性能はオーバスペックともいえ,本機の後継機では同調回路付き高周波増幅は搭載されていない.
-その他の機能-
006P(9V)と使用し電池収納部は開閉式となっている.このあたりの作り込みは当時のSONYの意気込みを感じる.音質は以外とよく長く聞いていても疲れないもの.
-購入時の状態-
これも動作未確認品として出品されていたもの.革ケースが付属しており,60年近く経過したものでは状態が良いといえる.電池接点は電池の液漏れで腐食していた.
-修理と調整-
電池接点を磨くことと可変抵抗のガリ対応で基本動作はOK.動作確認後にケースから基板を取り出してケースの掃除を行ってから調整を行う.中波専用のポケットラジオであるが,同調回路付きの高周波増幅付きでトラッキング調整は3段階となる.高性能を発揮させるには適切な調整が不可欠.