ナショナル T-601

ポケットラジオの高級機

NATIONAL T-601
高級感のあるT-601のリアパル
NATIONAL T-601
金属製の電池蓋

 1962年頃の製品で小型でいつも携行できるラジオを目指したものだろう.これも松下電子工業製.筐体はプラスチックではあるが,フロントパネルには金属のパンチングメタルを用いてさらにシボ革を貼り付けて高級感を演出している.リアパネルも凝った作りで,金属製の開閉式の電池蓋とスタンドが装備されている.この精密感はとても素晴らしい.操作部は右側に同調と音量調整が配置され,上部には音質切り替え(HIGH/LOW)とイヤホンジャックが装備される.


  6石スーパーだが,普通のポケットラジオとは異なり,選局つまみとバリコンは糸掛けの選局機構となっている.そのため若干の減速がなされ,このサイズとしては操作性はよい.電池は006P(9V)を使用.最大音量でも小さめな音量だが静かな部屋なら十分に聴取は可能.音質は悪くはないがサイズが小さいため,低音はほとんど聞こえない.音質をLOWに切り替えると中高域が抑制されるが,音量も低下する.

NATIONAL T-601
T-601の操作部

-購入時の状態-
 これはジャンク品として出品されていたもので外観は状態が良いといえた.機能は同調ツマミの固着と電源が入らない状態だった.

修理と調整-
 電源連動可変抵抗の接触不良と,電池スナップの錆を修復することで電源は投入できた.しかし音質切り替えは動作しない.基板を取り出すと深刻な問題を発見する.それはポリ・カーボネート製と思われる同調機構が経年変化で割れが複数発生しており,つまみ固着の原因は同調ツマミの軸が割れていたことによる.
 約60年前のものとはいえ同調機構は精密で,注意深く割れた箇所を鉄粉入りの強力エポキシ接着材で修復する.焦って失敗すると全てが台無しなので,一カ所ずつ修復を行い同調機構の修復にはおよそ2週間ほどを要した.

NATIONAL T-601の基板
基板の部品面
周波数ダイアルの下方が同調機構部
NATIONAL T-601の基板
基板のはんだ面はシンプル

 修復した同調機構を取り付け,選局ツマミとバリコンが同期することを確認できたところでIFT調整を行う.当機もIFTなどの調整部がパラフィンで固定されている.慎重にパラフィンを取り除いて調整前にはんだごてで温めて溶かしてから調整を行う.トラッキング調整を行い周波数表示と受信周波数を合致させて,最大感度に調整した. 調整終了後に音質切り替えが出来ない問題を調べてみると,パスコンが動作していないので手持ちの同容量ものと交換して修理終了.

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