無印 ST管5球スーパー修復記 ③
-電源回路の現状確認-
電源トランスを外す前に状態を確認してみる.1次側の抵抗値はおよそ10Ωで問題はなさそうなことを確認.2次側はA電源として6.3V,整流管用に5V,B電源として320Vのタップが使用されている.テスタでこれらの抵抗値を測ってみる.深刻なショートなどは見当たらない.1次側と2次側の絶縁にも問題がないことを確認した.
本機はフィールド・スピーカ(永久磁石の変わりに電磁石を用いるスピーカ)が使われており,そのフィールド・コイルはハムを消すチョーク・コイルとして動作する.その結線は取り外しているので,初段の平滑コンデンサ以降は接続されないこととなる.
-AC10Vで通電してみる-
整流管を取り外した状態で,スライダックで10Vに電圧を落とし,1次側に加えてみる.2次側の320Vタップには約34V,6.3Vタップには約0.6Vの出力が確認され,電源トランスは正常に動作しているようだ.
次に整流管の替わりに試験用に整流ダイオードを接続して,平滑コンデンサのチェックを行ってみる.この平滑コンデンサは1950年代の10μF電解コンデンサで,LCR計では10μFの容量が確認できた(容量抜けはない).しかしDC50Vほどの電圧を掛けると数mAの電流が流れる.いわゆるリークという不具合があり使えないことが確認できる.
-初段の平滑コンデンサを換える-
そこで4.7μF(400V)を2個並列接続したものに換えてみる.ここの平滑コンデンサの容量は整流管によって容量が定められている(出力電流によって決まる).指定値以上の容量を接続すると,整流管を痛めるので安易に容量を増やすことは避ける.80BK(HK)なら10μF以下となるので9.4μFとした.
-整流管を動かしてみる-
接続されているB電圧のタップは320Vなので,無負荷の整流電圧は約450Vくらいになる.スライダックで80Vに落とすと電圧は400V以下となる.試験用のダイオードを外して整流管の80HKを取り付ける.
1次側の電圧に80Vを印加すると,80HKのヒータが点灯しする.2次側の電圧も徐々に上がり約400Vとなった.とりあえずは正常に動作しているが,B電圧の調整は必要かもしれない.電源トランスを取り外して,清掃を施してさび転換剤を塗布する.