※ これはあくまで店主の事例です.真空管ラジオのメインテナンスは感電のリスクがあり,それなりの経験が必要です ※
-受信の確認-
一通りのメインテナンスが終わったら,受信の確認をする.まずは中波放送を受信してみる.5球スーパーなので,近隣の放送局ならアンテナ端子に1mほどのリード線で木造家屋なら十分受信できるはず.低周波増幅段は確認済みなので特に問題なくNHKなど近隣の放送が受信できた.
短波に切り替えると,どの周波数でもまったく受信ができない.とりあえず信号発生器で5MHzをアンテナに容量結合させても信号の確認ができない状態(この状態で455kHzは受信できたのでIF段以降は動作している).
-不具合を探す-
これにはいろいろな方法があるかと思う.店主はオシロスコープで12BE6の局部発振を確認してみた.やはり短波では発振が停止している.
発振コイルなどの結線を確認している途中で,一瞬動作することが確認された.こうした状態は配線の接触不良やはんだ付け不良などが考えられる.絶縁されたコア・ドライバで局発回路周辺を触れながら接触不良の箇所を根気強く探していく.
12BE6が取り付けられているソケットの配線をコア・ドライバで触れると大きなノイズが発生する.12BE6を触ると短波の受信ができることを確認した.ここで考えられるのは12BE6の不良かソケットの不良と思う.そこで12BE6を交換して様子をみる.やはり12BE6の差し込み方で動作状態が変化する.
動作した状態でラジオ日経を聞いていると,時折「バサッバサ」という音や「ジャージャー」といったノイズが断続的に入感する.これはアンテナを外しても同様なので,ラジオ内部のノイズと判断する.
-真空管ソケットを交換する-
① 交換作業の決断
ほとんどの真空管ラジオでは真空管ソケットはリベットでシャーシに取り付けられている.真空管ソケットの交換はリベットを外す必要があり,場所によってはIFTなどの大型部品も取り外す必要がある.手間暇を考えるとこの作業の着手には決断が必要で真空管ラジオでは大手術の分類となるだろう.今回は手持ちに7ピン・ソケットがあったことと,ドリルが入るスペースがありそうなので交換に着手した.
② 交換前の配線を写真に残す
作業前にソケット裏の配線をアングルを変えて写真を数枚取る.こうした修理では現物の写真が有効な資料となる.ソケットには取り付け方向があるので,外す前に十分に資料を残す.
③ ドリルでリベットを外す
ソケットへの配線を全て丁寧に外す.メーカー製のラジオは外れないように配線が端子にからげてあるので被服を傷めないようにはんだ付けを外す.他の部品を傷めないように,ドリルで2カ所のリベットを外すとソケットが外れる.
④ 新品のソケットを取り付ける.
方向を確認しながら仮に取り付けてみる.今回はM2.5のビスで取り付けるため,シャーシのリベット穴を少しリーマなどで広げないとビスが入らない.ねじ穴を加工して,切り粉などを奇麗に清掃する.ソケットを取り付けたら元とおりに配線を行い何度も確認する.真空管もピンの曲がりを修正して取り付ける.
-交換後の動作確認-
真空管ソケットを交換したところ,「バサバサ」音は奇麗に消えて,短波の受信も快調となった.しかし時折「ジャージャー」と入るノイズは消えていない.
そこでもう一度配線を確認したところ,電源プラグの付け根を触れるとノイズが変化するとを発見.電源プラグのコード内部で接触不良を起こしている.これは発煙や発火事故の原因にもなりかねないので,新品の電源コードに交換する.この対応で気になるノイズは解消し,ラジオとしての機能は復活した.